日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『借金大王』 ウルフルズ ~ 胸の中で毒づくけどホントは声に出して言いたい日本語

ドコを切り取っても、純度100パーセント、
混じりっけナシのロックンロール。

そりゃあもう、『完全無欠のロックンローラー』(1981年/アラジン/ by
なんか、まるっきりメじゃないほど完全無欠なロックンロール。

チャック・ベリーやリトル・リチャードを彷彿とさせる、
「ロック」誕生以前の1950年代そのものの、ザ・ロックンロールで、
どこかで絶対聴いたことがあるはずなのに、未だかつて聴いたことがない。
きっと何か元歌があるに違いない、と思わせる既視感全開なのに、
ちっとも元ネタが何なのかわからない。*1

きっと、いろんなロックンロールのイイトコどりなんだろう。


以前見たテレビ番組で ーたぶん「アッコにおまかせ!」だったと思うがー、
いちコーナーのジングル*2に「♪貸した金返せよ!」の部分が使われたことがあった。
司会の和田アキ子が、コーナーの内容そっちのけでこのフレーズに食いつき、
「これ、誰のうた?」「♪貸した金返せよ~か」「やるなぁウルフルズ」などと
完全にそっちに意識が飛んでしまい、
コーナーを進行したい峰竜太*3に小声で怒られていたことがあった。
さすが“R&Bの女王”和田アキ子の名はダテじゃない。
司会業よりもこの印象的なロックンロールのテイストに
心を奪われてしまったようだ。 


それにしてもこの洗練された音は何なのだろう。
ロックンロールそのものなのに、自分の知っているロックンロールとは違う。
ギターやベースのリフ、ドラム廻しなんか、定石通りで真新しさなんかないのに。
昔から少し疑問だった。

ひょっとすると、ステレオのスタジオ録音のせいだろうか。
昔のモノラル音源のレコードや、雑多な感じのライブ音源とはまた違って
ひとつひとつの音が非常にクリアで、それが新鮮さを感じるのかもしれない。



シングルジャケット/駿河屋より
借金大王

借金大王

 
  • 作詞・作曲 トータス松本、編曲 伊藤銀次
  • 1994年8月31日、東芝EMIより発売
  • オリコンランク外
  • 歌詞はうたまっぷへ:借金大王 - Wikipedia
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:借金大王 - Wikipedia

  • 気取らない日本語でロックを書かせたら右に出るものはいない、
    そんなトータス松本*4は、この頃からすでに顕著で、
    韻を踏んでいる、というよりはもはや連想ゲームやダジャレに近く、
    「♪お前は キリなし、文無し、宿なし、ナシ付けた女 数限り無し」
    ってな感じでまくしたてるのが、実に小気味いい。


    ところでところで、この威勢のいいセリフは、
    果たして本人に面と向かって言っているのだろうか。

    引っかかるのが
    「♪あいつは借金大王 同情してたら損する」
    「♪ムカつくあいつを嫌いになれないどーすりゃいいんだ」
    ”借金大王”の彼を指す代名詞に、「お前」のほかに
    「こいつ」ではなく「あいつ」が使われていることだ。

    ひょっとしてこの主人公、胸の中で威勢よく毒づいているだけで
    面と向かって言ってねぇんじゃないの?


    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    エンガチョ
    一説に、漢字で書くと「縁が著」。縁が著しく疎遠になること。まあ絶縁のことさね。


    トンヅラ
    一説に、漢字で書くと「遁面」。とんそうする、づらづら?)の合成語。
    まぁ、逃げて姿を隠すことさね。


    ナシ付けた女
    口説き落とした女、もしくは説き伏せて振った女。浮世を流したってことさあね。


    ツバつける
    人にとられないように、あらかじめ用心して手をつけておくこと。
    食い物を人にとられないように、あらかじめベロっと舐めておいて、
    誰も食べようとしないようマーキングしておくこと、、、ではなく、
    「眉唾」という言葉があるのと同じで、1種のマジナイみたいなのもの。
    化かされたり騙されたりしないために、用心の意味で
    つばを塗って魔よけとする風習から来ているものと思われる。
    桑畑には雷が落ちない、という迷信から怖いものがあらわれたときに
    「クワバラ、クワバラ」と唱えるのに似ている。

    現在入手可能な収録CD/視聴可能
    すっとばす

    すっとばす

    やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット

    ※該当曲を聴ける保証はありません。




    脚注

    *1:ラ・バンバ』(リッチー・ヴァレンス/1958年/ by)あたりが比較的近いが、何か違う。。

    *2:コーナーの冒頭や、クイズ番組のシンキングタイムや、回答を出す時の音楽など、事あるごとに繰り返し流される短い曲のこと。

    *3:もしかしたら勝俣州和だったかもしれない

    *4:気取らない日本語でフォークを書かせたら右に出るものはいない、さだまさしといい勝負