日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『舟唄』 八代亜紀 ~ ときどき無敵になればいい ♪チャンチャチャチャラー

こうやって、ただひとり

呑み屋でチビチビやっているだけで

歌になるのだから、演歌ってすごい。

 

 

「♪しみじみ飲めばしみじみと」

「♪ホロホロ飲めばホロホロと」

「♪ぽつぽつ飲めばぽつぽつと」 

 

しかし、いずれも言葉としては意味不明だ。

「しみじみ・・・」はもう頭の中に固定された語句として

染みついてしまっているので、それほど違和感を感じないが、

しみじみ飲むってどういうことよ、と改めて思う。

 

しみじみ動く、とか、しみじみ立つ、

とかに違和感があるように

単純な所作の装飾にはあまり向かない言葉だ。

 

しみじみ眺める、とか、しみじみ考える、といった

感情を伴う動詞を修飾するのに適している。

 

 

だけど、言いたいことは、必要以上にわかる。

 

飲めば、しみじみ*1と思い出が頭をよぎる。

飲めば、ほろほろ*2と心がすすり泣く。

飲めば、ぽつぽつ*3と未練がわき上がる。

 

この辺は、意味や前後のつながりよりも

音の印象を重視している(と思われる)阿久悠のなせる業なのだろう。

 

←【検聴合格】↑針飛び無しの安心レコード】1979年・並盤・八代亜紀「舟唄・長いプラットホーム」【EP】 シングルジャケット/amazonより
舟唄

舟唄

 
  • 作詞 阿久悠、作曲 浜圭介、編曲 竜崎孝路
  • 1979年(昭和54年)5月25日、テイチクエンタテインメントより発売
  • オリコン最高位15位(年間55位/1980年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:舟唄 八代亜紀 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:舟唄 - Wikipedia
  •  

    しかし、そんなことは比較的どうでもいい。

    この曲で一番重要なのは、八代亜紀のその歌声だ。

    その独特の声質と節回しで、聴く者を、宇宙人でさえも*4魅了する。

     

     

    歌の良し悪しを決める最も大きな要素は、

    メロディーやリズムであること言うまでもない。

     

    しかしそこに決定的な最後のひと押しをするのは、

    歌のうまい下手もさることながら、

    「歌声」

    声質や節回しが大きなウエイトを占めていると思う。

     

    どれそれの曲が好き、ではなく、誰それの歌が好き、という場合

    その多くはメロディーではなくその歌声に魅了されているのだと思う。*5

     

    個人的に、誰が歌ってもヒットする曲、というのは

    実は存在しないのではないかと思っている。

    だからこそ、この「百名曲」では

    「特定の歌い手によって知られている」

    という要素を、選定条件のひとつに入れているのだ。

     

    八代亜紀が歌ってこその、舟唄、なのだ。

     

     

    名曲・聴きドコロ★マニアックス

    途中で挿入される『ダンチョネ節』

    八代がたっぷりと歌いあげる。

     

    元々この部分は神奈川県の民謡だということだ。

    「ダンチョネ」自体にはそれほど意味はなく

    ソーラン節やズンドコ節と同様に、

    掛け声や擬音語の類と思われる。

     

    あるいは、究極まで意味を求めていけば

    アイヌ語や古代朝鮮語などに突き当たるのかもしれない。

    ダンチョネ、響きからすると朝鮮語っぽいが・・・

    誰か心当たりありませんか。

     

     

    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    「沖のカモメに深酒させてよ いとしいあの娘とヨ朝寝する」

    カモメに深酒させる、とは

    カモメを酔わせてでもおとなしくさせたい、

    という願望だと思われる。

     

    『石狩挽歌』(北原ミレイ/1975年/ by)にも歌われているが、

    海鳥が騒ぐところには魚の群れがいるので、

    漁師はそこに船を出さなければいけない。

    海鳥が泣かなければ、いとしい女とゆっくりと朝までいられる、

    という思いからきた言葉だろう。

     

     

     「ときどき霧笛がなればいい」

    ・・・でいい、これもいらないという割には

    かなり注文が多い男*6だ。

    おそらく、「なくていい」のではなく、「あってはいけない」のだろう。

     

    しかしかなりどうでもいいが、この部分、

    「♪ときどき無敵になればいい」という替え歌が頭をよぎり、

    スターをとったマリオが、

    頭の中を跳びはね始めるのでたいへんいけない。

    雰囲気台無し。

     

     

     

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    ▼ 八代亜紀
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    脚注

    *1:沁み沁み。感情にしみいるさまを表す言葉

    *2:ほろり、ほろり。小さいものや軽いものがこぼれ落ちるさまを表す言葉

    *3:ぽつり、ぽつり。途切れがちに間をおいて続くさを表す言葉

    *4:言わずと知れた(?)缶コーヒーBOSSのCMシリーズ。宇宙人ジョーンズは八代亜紀の舟唄に魅了され、怒涛の涙した

    *5:自分にとっては、それがジョージ・ハリスンだったりする。

    *6:女の八代亜紀が歌っているが、主人公は男性