10代の頃、どういうわけかこの曲が大のお気に入りだった。
サウンドだけでなく、この歌詞世界にしてやられていたような気がする。
くだけた口調で、無限とも錯覚できる世界の大きさと、人生の可能性を語る、
そのアベコベさにだ。
「♪半人前が いっちょ前に 部屋の隅っこ ずっと見てやがる
おぅ メシも食わず 生意気なヤツだ」
感情移入したのは、なぜかオヤジの方。
10代の身空で、息子がいるはずもなく、
結婚相手どころか恋人の影すらもなかった時分なのに。
ところが実際、子をもって知ったことだが、
自分の子どもに、そこまでの可能性を見い出さないし、
世界の広さを語れるほど、世界を知らない。
将来の責任なんか全然持てないし、
ただただ平穏無事に、そして欲を出せば、ちょっぴり背伸びしてくれることを、
まるで他人ごとのように願っているだけだ。
「♪憧れや 欲望や 言い逃れや 恋人や 友達や 別れや
台風や 裏切りや 唇や 出来心や 猥褻や ぼろ儲けの罠や」
ましてや、先々に待ち構えるであろう出来事を、
こんな風に訥々と思い描くほどのロマンチストには程遠い。
そう、この物語は、ある種の理想というか
子を想う親の気持ちはかくあるかなという、
ロマンチシズムなんだろうなと思うようになった。
さもありなん、この時点で奥田民生自身、子もいなければ奥さんもいない。
ソロデビュー前のユニコーン時代の、
『大迷惑』(1989年/ by)や
『働く男』(1990年/ by)、
『ヒゲとボイン』(1991年/ by)などで
サラリーマンの悲哀を描くが、奥田自身サラリーマン経験がないのも同じ。
言い方は悪いが、ホームドラマ的世界を描いているに近い。
だけどそれは決して卑下するものでも蔑むものでもない。
物語を紡ぐ者は、決してその道のプロフェッショナルである必要はないからだ。
虫も殺さぬような者にだって、一級のサスペンスは描けるし、
恋を知らぬ者だって、とびっきりのラブロマンスを描き出せるはずだ。
言葉を選ぶ才能と、自分とは違う世界への憧れや渇望こそが、
とびっきりの物語を生み出すのだろうから。
話変わって、歌詞カードには出てこないこの曲の最後のヴァース、
ここで「♪小豆相場*1や」と歌っていると、都市伝説のように囁かれている。
だけどこれはあまりにも、「いかにも奥田民生」っぽ過ぎやしないか。
まことしやかに「レコード会社の人がオフレコで言っていたらしい」的な
伝聞まであって、うさん臭さがぷんぷんだ。
そう聞こえなくもないが、そうは言っていないような気もする。
おそらく実際のところは、オケ録音時のガイドボーカル(仮唄)を、
ギターのマイクが遠くに拾ってしまっただけで
隠しメッセージとかそういうものではない、というのが正解なんだろう。
そこをあえて、なんと言っているかの聴き取りに試行錯誤してみることにした。
奥田も敬愛するビートルズに対し、
ビートルマニアたちが、ありもしない楽曲の裏の裏まで追求する感じで・・・
とりあえず音声加工してみた。
ああ、音が汚くなるだけでちっともうまく拾いだせない。
10点満点で1点なり。
だけど、フェードアウトして聞こえなかった最後のギターソロだけは
はっきり聞こえるようになったのでオマケで2点。
計3点。まずまずかな?
そんなこんなで自分なりに聴きとった結果が以下。
「♪安心や 肉親や うたかたや 秋の空に 約束や 憎しみや・・・」
文字にした上で聴くと、まるでそう歌っているようにしか聞こえなくなっていけない。
だけど、それであれば
「♪酒池や 肉林や 二股や 小豆相場や 役得や 肉臭や・・・」
と文字にして聴くと、、そうとも聞こえてしまう。うむぅ。
やはり謎は謎のまま放っておくべきか。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
俺なんかよりずっとイケる別嬪さんにきっと惚れられる
「俺なんかよりずっとイケる 別嬪さんに」
とメロディー通りに区切ってしまうと、
俺よりもイケてる美人、に惚れられるという意味になってしまい、
つまりは「俺」って実は母親だったの?ってトンデモ解釈になってしまう。
確かに誰も、主人公は男だと言ってないけどさ。
母ちゃん目線でも問題ないわけだ。
意味的な区切りでスペースを空けて書くならば、
「俺なんかよりずっと イケる別嬪さんに きっと惚れられる」
こんなこと書かなくても、わざわざヒネクレた解釈する奴はいないけどな。
まだ存在のない「エア息子」に、ロマンチスト母ちゃん。
案外になかなかいい組み合わせじゃないか。
全然関係ないけど、「じゃあお前は何なんだ」というシロモノがあったので紹介しておく。
ここでいうエアーポットの「エアー」は「エアギター」と同じ意味合いで、
実体のない架空の存在のようだ。
その腕とその足で戦え
道具も使わず、ひとにも頼らず、
自分の人生は自分自身で切り開けという、
手は貸さないぜ宣言。
見守ってやる宣言でもあるかもしれない。
だけど口は出しちゃうんだな。これが。
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