なんでだろう。フラレ男の歌がとっても好きな自分がいる。
といっても、好き好んでフラレ男のイジケっぷりを愉しんでいるわけではなく、
気づいたらその手の曲ばかりを好んで聴いていたことに、気づいただけだが。
過去にここで採り上げた曲の多くに、その傾向が見られることからもよくわかる。
どうも、やけっぱち気味に開き直っているのが好みのようだ。
具体例を挙げてみよう。
「♪別にふざけて困らせたわけじゃない 愛というのに照れてただけだよ
夜というのに派手なレコードかけて 朝までふざけようワンマンショーで」
(『勝手にしやがれ』 沢田研二/1977年/ by)
「♪孤独が好きな俺さ 気にしないで行っていいよ
気が変わらぬうちに早く 消えてくれ」
(『ルビーの指環』 寺尾聰/1981年/ by)
「♪俺の贈った銀のロケット 今では違う誰かの写真
イイさそいつと抱き合いながら 悲しい恋を笑ってくれよ」
(『涙のリクエスト』 チェッカーズ/1984年/ by)
「♪君が欲しい今でも欲しい 君のすべてに泣きたくなる
幸せかい傷ついてるかい あの日の夢を生きているかい」
(『格好悪いフラれ方』 大江千里/1991年/ by)
「♪いつでも探しているよどっかに君のカケラを
旅先の店 新聞の隅 こんなとこにあるはずもないのに」
(『One more time, One more chance』 山崎まさよし/1997年/ by)
「♪『ウソツキ』って小さな声 聞こえないフリした
君は僕のこと分かっていたんだ ずっと前から」
(『ウソツキ』 Something Else/2000年/ by)
「♪ハブラシは俺のだけが痛んでゆく 何故なんだOh, Baby
ねぇ君は愛の続きを ねぇ誰としてる」
(『ひとりぼっちのハブラシ』 桜庭裕一郎/2001年/ by※これは作者のつんくによるバージョン)
ラストに挙げた歌詞のあまりの痛さっぷりにゾクゾク来るが、
これらそうそうたるイジケ虫ラインナップに
負けじとイイ曲で、負けじと情けないのが、今回の表題曲なのだ。
何と言ってもしょっぱなからウジウジモード全開だ。
「♪何も語らない君の瞳の奥に 愛を探しても
言葉が足りない そうぼやいてた君をふっと思い出す」
シチュエーションをよくよく想像してみると、
この主人公、フラれた恋人の写真を眺めながら、
自分の何がいけなかったんだと自問自答してやがるんだな。
最高じゃないか。
この頃のミスチルの曲にありがちな、ビートルズをオマージュしたアレンジが
ちょいと鼻につくが、寂しげな雰囲気をまといながらも、
絶望の淵にいるような深刻さを感じない、
それどころか反省している素振りを見せながらも、ちっとも懲りていない、
あっけらかんとした雰囲気がとても良い。
先に挙げた「♪愛を探しても」の部分が、
ブンチャッチャ、ブンチャッチャ、と変拍子風にワルツっぽくなっているのも
肩ひじ張らず気が抜けた感じでいい味を出している。
「♪顔のわりに小さな胸」とか
(逆に、胸がありそうな顔ってどんな顔だろう?相撲取りみたいなツラだろうか。)、
「♪家事に向かない荒れた手のひら」とか
(むしろ、家事をしているから荒れるんじゃないだろうかとも思うけどな。)、
「♪いつか町で偶然出会っても 今以上に奇麗になってないで」とか
(自分と別れてから奇麗になったら嫌なのだろうか。んで、あったら「変わってね~なぁ」とか笑うんだろう!(怒))、
「♪毎晩君が眠りにつくころ 相も変わらず電話かけてやる
・・・なんて まるでその気はないけど」と、
必要もないのに相手をくさしたり、一人なんちゃってをやるばかりで、
まるで反省や改心する気はない様子。
自分の態度が原因だとうすうす気づいてはいるものの、
別れは「君」の「心変わり」のせいと断言してはばからないのはさすがだろう。
そんな風に、アルバムのラストを飾るには、
あとに引きずってしまいそうな「納得のいかない別れ」のテーマのはずが、
あまりの自業自得っぷりに、
しょうがねー奴だな、次がんばれよ、次、と
エールでも送りたくなるような幕引きになるのだった。
オーバー*1。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
キスはしないどこって言ってた
歌詞カードでは「しないでおこう」ってあるけど、
実際「しない・ど・こぅ」って歌ってるよね。
「言わなんどこ」(言わないでおこう)とか、「見やんどこ」(みないでおこう)、
とかいう表現と同様に、これは西日本方言なのかしら?
夕焼けに舞う雲 あんな風になれたらいいな
素直じゃないことを、詩的に言うとこんな表現になるんだなぁ。
夕焼の色にぱっと染まる雲を、余計なことも考えず相手の色に染まれる存在として見てるんだから。
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脚注
試聴はこの先から
*1:【オーバー】無線通信などで、自分のしゃべくりのターンはここまで、という時に、「以上」という意味合いで「オーバー」という。日本語では「ドーゾ」というらしい