日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『まちぶせ』 石川ひとみ ~ ストーカーという概念の有無で、曲の印象がまるで違う!

この曲の作者である、ユーミンこと松任谷由実

のちに「荒井由実」名義でセルフカバーしたときには

ストーカー気質の怖い女扱いされた、この曲の主人公だが、

まぁ、確かに文字通り捉えるならばかなり怖い女だ。

 

「あなた」と「あの娘」の恋人同士のテーブルに、

ずかずかとわり込んで「♪テーブルを挟んであなたを熱く見た」り

「あの娘」が振られたという噂を耳にしてからは、

あろうことか「♪別の人がくれたラブレター見せたり」と、

人の迷惑も顧みず、やりたい放題だ。

歌詞に出てこない「まちぶせ」というタイトルも、 

男を待ち伏せするハンターのさまを連想させる。

 

何より怖いのが、「♪好きだったのよ あなた」と過去形であることだ。

好きだったのが過去形なのに、男を振り向かせようとする。

振り向かせた挙句、こっぴどく振る気なのだろうか。

これは逆恨みからくる復讐劇なのかと勘ぐってしまう。

 

 

 

そんなふうに、90年代に松任谷由実が歌ったときには、

ちょうどこの頃にストーカーという言葉が一般化してきた時流もあって

まさしくストーカーの歌だ、という受けとられ方をしていたけど、

一方、石川ひとみが歌った80年代*1では、

ヤな感じの奴だけど、せいいっぱい背伸びして、小悪魔を気取って

強がっている女の子の歌、というような受けとられ方をしていたと思う。

 

歌い手のイメージや、年齢によるところも大きいのは事実だが、

なにより、ストーカーという概念が存在しなかった時代と、

世間にストーカーの何たるかが浸透しきっている時代とで、

歌詞から連想されるイメージがまるでちがう、というのが実際のところだろう。

 

当時は、おっかない女だなぁ、という印象を受けても

決して恐怖の対象ではなかったのは間違いない。

けど、今だったら、こういう人がいたらちょっとした恐怖だもんね。

 

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まちぶせ

まちぶせ

 
  • 作詞・作曲 荒井由実、編曲 松任谷正隆
  • 1981年4月21日、キャニオンレコードより発売
  •  
  • オリコン最高位6位(年間33位/1981年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:まちぶせ 石川ひとみ 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:まちぶせ - Wikipedia
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    だけど、決して陰湿な感じを受けないのがこの曲のキモ。

    カラッとした雰囲気を演出しているのは、

    跳ねるように小刻みなフレーズをもつメロディーだろう。

     

    音を伸ばしている部分も、

    「♪好きだ~ったのよ あ~なた~」と歌っているハズなのに、

    延ばしている音が分離しているように聞こえるため

    「♪好きだあったのよ ああなたあ」と歌っているように聞こえるし、

    むしろ意識的にそう歌っている可能性もある。 

     

    おそらくこのメロディーを譜面におこしてみると、

    4分音符ひとつの音は、同じ音階の8分音符ふたつ、

    もしくは8分音符と8分休符ひとつずつで表現されるのではないかと思う。

    「♪ゆ~ぐれの まちか~ど」ではなく、「♪ゆうぐれのっ まちかぁど」って具合にね。

     

    さらに意識してか無意識か、おなじ発音(もしくは同じ母音)の音が

    連続して出現するのが頻繁にみてとれるのも気になるところだ。

    ゆうぐれの街角 のぞいた喫茶店 ほほみ見ぃつめあう・・・

    「ほほえみみ~」の部分なんて、ひらがなで表記すると、なんだか異様だもんね。

    まるで「かたたたき」みたいじゃないか。

     

    普通は発音が重なると歌いにくくなるから避けるところを、

    歌いにくくなるからこそ、一音一音丁寧に歌うように仕向けられているのかもしれない。

     

     

     

     

    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    言い寄る

    異性からのアプローチを指す言葉だが、あまりいい意味で使われない言葉だと思う。

    言い寄る、とか、詰め寄る という言葉には、

    ニュアンス的に、ぐいぐいと差し迫るような強引さが感じられる。

    普通ならここは、声をかける、とか、思いを告げる という言葉の方がふさわしいはずだ。

     

    自分の行動に、言い寄る、なんて表現を使うあたり

    だからオマエは恐い女だって言われるんだよ、っと突っ込みたくなる。

     

     

    もうすぐ私きっと あなたを振り向かせる

    これが自分を励ますための言葉ならいいんだけど、

    この「もうすぐ」と「きっと」の組み合わせときたら、

    ホントにそう思い込んでいるとすると、すごく怖いよな。

     

     

    ああ、いけない! 怖い怖いって書きすぎた!

    この曲、怖くないよ!

    むしろとってもキュートなんだから!

     

     

     

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    脚注

    *1:もっというと、この曲のオリジナルの歌手である三木聖子が歌っていた70年代も