個人的な話題からで恐縮だが(いつものこと?)
初めて火山というものを体感したのが、1986年の伊豆大島三原山の噴火だった。
授業中、突如「バーン」という激しい音とともに発生した地震に、教室は騒然となった。
その後、間をおいて幾度となく激しく窓をバタバタ言わせ繰り返す地震に、
机の下にもぐりながら、いったいぜんたい何事が起ったのか案じていた。
やがて校内放送で「地震ではありません」という、意味不明なアナウンスがあり、
伊豆大島の噴火による空振だと説明が添えられた。
この時初めて「空振」なる語句を耳にしたが、要は噴火による衝撃波のことだ。
ここ数日ニュースで見聞きしていた、どこぞの島の噴火が、
こんなところ(当時神奈川県内陸部に住んでいた)まで影響する、
何よりもそのことに驚いたことを思い出す。
ちなみに、これは全島避難に繋がる大噴火に至る前の話。
噴火が「御神火」と呼ばれ、まるで見世物のように観光客や報道人を呼び寄せていた
平和な小規模噴火の時点での出来事だ。
何でこんな話からスタートしたかというと、表題曲で歌われる伊豆大島*1は、
「♪いくら好きでもあなたは遠い 波の彼方へ往ったきり」
と歌われるイメージよりは、ずっと本土に近いことを言いたいがためだ。
また後年、伊豆の大室山*2から相模湾を望んだ際にも、大島を含めた伊豆七島の近さに驚いた。
大島は決して遥か遠い離島ではなく、手を伸ばせが届きそうな場所に存在するのだ。
自分自身、伊豆大島には行ったことはないので想像でしかないが、
おそらく大島からも本州が良く見えるのだろう。
特に夜ともなれば、華やかな夜景が対岸に見られることは想像に難くない。
そんな遠くて近い島に住む若者が、目に見える現実的な憧れとして
東京に代表される、本土にあこがれを持つのはごく自然なことなのだろう。
表題曲の16歳の主人公も、そのうちのひとりだろう。
「♪惚れちゃならない都の人に 寄せる想いが灯と燃えて」と歌われるが、
その「都の人」は特定の個人だったのかもしれないが、
本当にあこがれていたのは、人ではなく都そのものだったものと思う。
この当時にしたって、船でのんびりいっても、半日もあればたどり着く。
恐らくは新潟あたりから東京に出てくるのと、所要時間は大差なかったものと思う。
山向こうに隔てた、写真や映像でしか見ることのできない彼方よりも、
海を隔てて霞んで見ることのできる都の地は、より直接的な憧れだっただろう。
あの人に島に戻ってきてほしい、と願うのではなく、
想いだけでも都へとの想いからか、
船便で手紙を差し出したり、黒髪を切ってカモメに託したりしているのだ。
「つぼみ」である主人公は、やがて花咲くころには
自身も旅立ってゆくのだろうか。そこまでは語られずに物語は終了する。
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どっから声出してんねん感が半端ない、都はるみの歌唱が特筆モノ。
極めつけはサビの「♪あん゛こぉ~椿は~」の短いフレーズの中に現れる、
発声のバリエーションの目まぐるしさ。
民謡風にうなり上げたかと思えば、脳天から響かせているような高音を突き上げ、
トドメに振幅の大きい短い周期のビブラートを絡めてくる。
これを無理なくスムーズにつなげてしまうんだから、本当に大したもんだ。
この時まだ、都はるみは歌の主人公と同じ16歳。マジか。
「♪伊代はまだ 16だから~」と歌っていた誰かさんとえらいギャップだ。
(『センチメンタル・ジャーニー』/松本伊代/1981年/ by
)
この世に存在する最高の楽器は、人の声だという名言があったような気がする。
都はるみの声こそ、まさにそういう名器の類ではないかとつくづく感じる。
後頭部から後方に延びる、長いトサカのような鼻腔管を持つ恐竜がいる。
パラサウロロフスという名前らしい。
一説にはこのトサカで鳴き声を響かせていた、”美声恐竜”だと言われているが、
おそらく都はるみにも似た器官が存在するものと思われる。
そうでなければ、あの「空振」のように突き抜けるような響きは
説明がつかないではないか。
漫才師 オール阪神・巨人の阪神師匠や、
『パタパタママ』(1976年/ by
)などでおなじみの歌手
のこいのこ あたりも、同様の器官を持ち合わせていると思われる。
遥か未来、彼女らの頭蓋が出土、発掘され、骨格が復元されたときに、
その謎は解けるものと思う。
自分でいうのもなんだけど、ヒドい内容だよな。(いつものこと?)
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
三日遅れの便り
前述のように、大島から東京へは3日もかからない。
当時だって1日数往復の航路があったはずだから、
内地の郵便事情とそれほど変わらなかったはずだ。
それを言ったら、本州内だって雑誌の発売や郵便が数日遅れの地域だって、
近年までざらにあったくらいだから、
通常よりも3日余計にかかるほど遠い、という解釈は成立しない。
陸路との一番の違いは、海がシケで船が欠航になる可能性があること。
台風か何かが通過したのだろう。2~3日ぶりに出港した船が、
3日ほど前に差し出した手紙を載せて、ようやく波浮港*3を出港していくのだろう。
アンコ
漢字交じりで書けば「姉ン娘」だそうだ。
甘く煮た小豆のことではない。
また、「アンコ椿」という花は存在しない。
この歌だけに存在する、造語のようだ。
椿、かすり
「大島椿」で知られる、椿油を取る椿の花も、
「大島紬」で知られる、絣(かすり)模様の織物も、
言わずと知れた大島の名産品。
この歌は、後年流行することになる「ご当地ソング」の先駆けでもあるのだろう。
ちなみに絣模様の代表は、漫画なんかで「#」の模様で良く書かれる、
あの柄なんかを想像してもらえれば解りやすいだろうか。
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