日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『強く儚い者たち』 Cocco ~ 悪魔のささやきの裏には、報われない恋の悲しさがある

時は、大航海時代
何かの物語の主題歌ではないことが不思議なくらいな、
なんとも寓話的なシチュエーション。

それにしても視点が斬新。
主人公の役どころは、なんと「悪魔のささやき」。


自分が悪女と思われることもいとわず、むしろ余裕しゃくしゃくとばかりの口調で、
まるで子守歌でも聴かせるかのように、そしてすべてお見通しとばかりに、
ただ淡々と相手に語りかける。


人の心は、人が信じようとするより、はるかにはかなく、
誰もが心に弱さをかかえている。
だからあなたが誘惑に負けることがあっても、それはあなたのせいじゃない、と。

強く儚い者たち
シングルジャケット/amazonより
強く儚い者たち

強く儚い者たち

 
  • 作詞 Cocco、作曲 柴草玲、編曲 根岸孝旨
  • 1997年(平成9年)11月21日、ビクターエンターテインメントより発売
  • オリコン最高位18位(年間68位/1998年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:強く儚い者たち Cocco 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:強く儚い者たち - Wikipedia

  • ささやきはさらに続く。
    反面、人の心はとてもしたたかだと説く。

    知りもしないはずの恋敵を、
    「♪固い誓い交わしたのね そんなの知ってるわ」
    と知ったようなことを言ったうえで、
    「♪あなたの姫様は 誰かと腰を振ってるわ」と、
    今頃あなたの恋人は、ほかの男とよろしくやっているよ、
    と、かなり直接的な表現で揺さぶりをかける。



    ゆったりとしたレゲエのリズムに乗り、
    終始そんな感じに、淡々と悪魔のささやきが続く。
    主人公の心情的な言葉はほとんど無い。
    そのため聴き手は、主人公に感情移入する隙を与えられることはない。

    主人公の心が顔を覗かせるのは、ホンの一瞬。
    「♪愛する人の未来など 遠い目をして言わないで」

    それ以外は、ただただ、第3者の視点で
    物語を俯瞰することだけが許されている。




    新天地や財宝、地位と名誉、そして大いなるロマンを求めた冒険者と、
    それを待つ恋人たちによる、大航海時代の物語。

    冒険者は、国もとに将来を誓った恋人を残し、
    嵐を乗り越え、戦いの中生き延びて、ひとつの街にたどり着いた。

    そんな、恋にも夢にも一途な冒険者に、
    主人公は恋をしてしまった。

    なんだか悲しいね。




    名曲・聴きドコロ★マニアックス

    イントロに現れる、音色の違う2つのギターの音が印象的。

    F1のスタート前のエンジンの空ぶかしのような、歪んだ重低音のギター音が開始の合図。
    その後淡々としたリズムに乗って現れる透き通ったシンセサイザーのような音は、
    これもギターの音だろう。(たぶん)

    対照的な2つのギターの音が、非日常の物語へといざなってくれる。



    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    このささやきは
    共感・誘惑・脅し・嘆き
    の繰り返しで構成されている

    共感愛する人を守るため 大切なもの築くため 海に出たのね」
    誘惑「住みつく人もいるのよ ゆっくり休みなさい」
    脅し「何も失わずに 同じでいられると思う?」
    嘆き「人は弱いものよ とても弱いものよ」

    誘惑「甘いお菓子をあげましょう 抱いてあげましょう」
    共感「何度も確かめ合い 信じて島を出たのね」
    脅し「あなたの姫様は 誰かと腰を振ってるわ」
    嘆き「人は強いものよ とても強いものよ」

    押しては引いて、人の心の弱さにぐりぐりと食い込んでいく。
    必死さが見て取れて、こわい。




    現在入手可能な音源

    【オリジナルアルバム】
    クムイウタ

    クムイウタ

    • アーティスト:Cocco
    • 発売日: 1998/05/13
    • メディア: CD
    やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット
    ▼ Cocco
    icon icon

    ※該当曲を聴ける保証はありません。

    脚注