時は、大航海時代。
何かの物語の主題歌ではないことが不思議なくらいな、
なんとも寓話的なシチュエーション。
それにしても視点が斬新。
主人公の役どころは、なんと「悪魔のささやき」。
自分が悪女と思われることもいとわず、むしろ余裕しゃくしゃくとばかりの口調で、
まるで子守歌でも聴かせるかのように、そしてすべてお見通しとばかりに、
ただ淡々と相手に語りかける。
人の心は、人が信じようとするより、はるかに儚く、
誰もが心に弱さをかかえている。
だからあなたが誘惑に負けることがあっても、それはあなたのせいじゃない、と。
ささやきはさらに続く。
反面、人の心はとても強かだと説く。
知りもしないはずの恋敵を、
「♪固い誓い交わしたのね そんなの知ってるわ」
と知ったようなことを言ったうえで、
「♪あなたの姫様は 誰かと腰を振ってるわ」と、
今頃あなたの恋人は、ほかの男とよろしくやっているよ、
と、かなり直接的な表現で揺さぶりをかける。
ゆったりとしたレゲエのリズムに乗り、
終始そんな感じに、淡々と悪魔のささやきが続く。
主人公の心情的な言葉はほとんど無い。
そのため聴き手は、主人公に感情移入する隙を与えられることはない。
主人公の心が顔を覗かせるのは、ホンの一瞬。
「♪愛する人の未来など 遠い目をして言わないで」
それ以外は、ただただ、第3者の視点で
物語を俯瞰することだけが許されている。
新天地や財宝、地位と名誉、そして大いなるロマンを求めた冒険者と、
それを待つ恋人たちによる、大航海時代の物語。
冒険者は、国もとに将来を誓った恋人を残し、
嵐を乗り越え、戦いの中生き延びて、ひとつの街にたどり着いた。
そんな、恋にも夢にも一途な冒険者に、
主人公は恋をしてしまった。
なんだか悲しいね。
名曲・聴きドコロ★マニアックス
イントロに現れる、音色の違う2つのギターの音が印象的。
F1のスタート前のエンジンの空ぶかしのような、歪んだ重低音のギター音が開始の合図。
その後淡々としたリズムに乗って現れる透き通ったシンセサイザーのような音は、
これもギターの音だろう。(たぶん)
対照的な2つのギターの音が、非日常の物語へといざなってくれる。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
このささやきは
共感・誘惑・脅し・嘆き
の繰り返しで構成されている
共感「愛する人を守るため 大切なもの築くため 海に出たのね」
誘惑「住みつく人もいるのよ ゆっくり休みなさい」
脅し「何も失わずに 同じでいられると思う?」
嘆き「人は弱いものよ とても弱いものよ」
誘惑「甘いお菓子をあげましょう 抱いてあげましょう」
共感「何度も確かめ合い 信じて島を出たのね」
脅し「あなたの姫様は 誰かと腰を振ってるわ」
嘆き「人は強いものよ とても強いものよ」
押しては引いて、人の心の弱さにぐりぐりと食い込んでいく。
必死さが見て取れて、こわい。
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