日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『精霊流し』グレープ ~ 人物相関図、考えすぎると複雑になり妄想が暴走する

『案山子』(さだまさし/1977年/ by)にしても同様なことが言えるが、

この『精霊流し』という曲は、場面が進んで、人間関係が判明していくにしたがって、

どんどんその相関図が不可解になっていくのはなぜなのだろう。

 

この歌に登場するのは

故人である「あなた」と、主人公である「私」

精霊流しに参列してくれた「お友達」

場違いにはしゃぎまわる「小さな弟」

そして「母さん」だ。

あぁ、「人ごみ」も出演するけどこれはモブ*1なので除外していいかな。

 

実際には、この歌のモチーフになった出来事があり、

モデルとなった家族も存在するらしいが*2

あくまでモチーフであり、あくまでモデルであって、

当たり前だが全てが実話というわけはなく、

程度の差こそあれ、設定や出来事が脚色されているのは間違いない。

元となった話は、それはそれで置いておいて、歌詞の読み込みを進行してみよう。

 

 

導入部の歌詞はすんなり受け入れられる。

ここ1年の間に亡くなった「あなた」の新盆*3に、

「わたし」や「母さん」と友人たちの手で精霊流し*4が執り行われる場面だ。

 

若くして亡くなった「あなた」と、その妻(あるいは婚約者)だった私。

二人はそんな関係だろうと想像できる。

 

「♪二人でこさえたおそろいの浴衣」という描写からもそれをうかがえる。

こさえた、ということはだれかに買ってもらったわけではない。

ある程度の金銭や技術を扱える年齢が必要だからだ。

とはいえ、文字通り自分たちの手でおそろいの浴衣を縫い上げた、

若い姉妹や女友達同士という可能性や、

二人が何らかのパフォーマンスデュオをやっていて、

ユニフォームとして浴衣をそろえた、という可能性も無くはない。

 

ところがここで意外な人物が登場する

「♪私の小さな弟が」

人の生き死にが重い現実として実感できないような、

幼い弟が登場することで、人間関係が一気にわからなくなる。

もちろん、主人公にやたら年の離れた弟がいる可能性*5は捨てきれない。*6

なお、「私の」とついているので、故人とこの弟にはおそらく血縁関係がないことはわかる。

 

「♪あなたの愛した母さん」 

「母さん」という呼び方にかなりの引っ掛かりを覚えるのは自分だけだろうか*7

「お母さん」ではなく、「母さん」だ。友達は「お友達」と歌っているのに。

はてさて、この母さんは誰の母さんなんだろう。

 

 

精霊流し[グレープ][EP盤] シングルジャケット/amazonより
精霊流し (シングル・ヴァージョン)

精霊流し (シングル・ヴァージョン)

 
  • 作詞・作曲 さだまさし、編曲 グレープ
  • 1974年4月25日、ワーナーパイオニアより発売
  • オリコン最高位2位(年間13位/1974年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:精霊流し グレープ 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:精霊流し (曲) - Wikipedia
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    さぁ、全てを解決させる人物相関図はコレだ!*8

     

    母さん → 主人公の母親で40歳前後か。シングルマザーだが最近になって若い恋人ができた。

    あなた → 年のころ30くらいだろうか。主人公の母親の恋人。

    私 → 中学生くらいの女の子。母親の連れてきた恋人と妙に気が合う。

    弟 → 小学校低学年の男の子。母親の恋人、という存在にピンと来ていない

     

     

    母親が、やけに人当たりのよい若い恋人を連れてきた。

    新しい父親、というよりも、どちらかというと兄ができたような気分。

    こいつは墓場まで持ってくぜ!という理解不能なレコードを聴かせてくれたり、

    興が乗ると自らギターを取り出して歌ってくれるような人だ。

     

    いつだったか、私が、夏祭りは浴衣でいきたいなぁ。と言っていたのを覚えていたらしい。

    ある日突然浴衣を買ってきてくれた。だけどなぜか、彼の甚平とおそろいの柄。

    なんでも、イメージに合うのが無くて、特別に作ってもらったとか。自分のはついでとのこと。

    ペアルックにするなら、母さんと一緒にしろっての!

     

    しかし、そんな楽しい日々も長くは続かず、彼は不慮の事故で帰らぬ人となった。

    時は過ぎ、彼の初盆をむかえ、私は一家で彼の精霊流しに参列した。

    家族になり損ねた家族として。

     

    そこで主人公は、若いなりに

    「あなた」の、「わたし」の、「弟」の、そして「母さん」の、

    それぞれの人生の意味を見つめるのであった。

     

     

    さぁ、この妄想ストーリーを読んでから、『精霊流し』を聴いてみよう!

    しっくりと来ながらも、無性にモヤモヤしないか?

     

     

     

     

    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    精霊流し

    お盆になると、ご先祖さまや縁故者があの世からもどってきて、

    お盆が過ぎると、またあの世へと還ってゆく。

    たいていどの地域の盆行事も基本はそういう流れになっているが、

    何故かその行き来の仕方が地域によって大きく違う。

     

    ナスやキュウリでちいさな馬や牛(精霊馬しょうりょううま)を用意する地域もあれば、

    小さな火のついた灯篭を、静かに川に流す(灯篭流し)ところもある。

    そして、長崎の「精霊流し」のように、車輪のついた巨大な船を用意し、

    爆竹を鳴らしながら街中を練り歩くようなものもある。

     

    精霊流しは街中を練り歩くから、レコードをかけながら船のあとをついていったり

    人ごみの中を縫うように進む情景になるわけだ。

     

     

    錆びついた糸で薬指を切りました

    何気ない描写だが、意外な事実が色々と隠されている。

    ギターの弦を「糸」と呼ぶくらいなので、主人公がギターに明るくないことは確かだ。

    しかし、薬指を傷つけるというのは普通じゃない。

    弦を押さえるにしても、弾くにしても、初心者が

    薬指のような使いにくい指を駆使することは考えにくいからだ。

     

    とすると、ギターは弾かないまでも、

    主人公がこの手の楽器に慣れていることになる。

     

    重要なのは、実は和楽器では弦のことを「糸」と呼ぶこと。

    つまりは、主人公は三味線や胡弓、琵琶といった楽器に

    慣れ親しんだ人物であることが推測される。

     

     

     

    現在入手可能な収録CD/視聴可能

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    ※該当曲を聴ける保証はありません。

     

     

     

    脚注

    *1:mob。英語でその他大勢の群衆のこと

    *2:海の事故で亡くなった、さだまさしの従兄の精霊流しをイメージして作られたらしい。

    *3:亡くなって初めて迎える盆のこと。「あらぼん」と読むのが普通なのだと思っていたが、「にいぼん」とも読むらしく、それどころか、全国的には「初盆(はつぼん)」というのが一般的らしい。

    *4:長崎県周辺の行事で、故人の霊をのせた船を模した山車を曳く送り盆の祭典。アジアの祭りなどと同じく、爆竹などを鳴らして騒がしい。

    *5:親が再婚した後添えに子どもが生まれたような場合。いしだ壱成の3周り以上年下の弟にあたる、石田純一東尾理子夫妻の長男のような関係。

    *6:場の空気の読めない、背の低いとっちゃんボーヤの実弟、あるいは舎弟という可能性もある。可能性は挙げだしたらきりがない。楽しいけど。

    *7:彼がしきりに「母さん」「母さん」いうので、皮肉を込めて心の中で「あなたの愛した母さん」呼ばわりしている可能性もあるけども。

    *8:ちょっとひどい相関図なので、本気のファンは読み飛ばそう!