日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『伊勢佐木町ブルース』 青江三奈 ~ スケベを餌にやりたい音をやってのけるべし

歌詞の内容はともかくとして、イチイチかっこいい曲である。

跳ねるようなストリングスのリフ*1
静寂の中、時計の秒針が時を刻むような、乾いたドラムの音、
青江三奈のタメのきいたハスキーボイス、
そしてブレイク、
「ドゥドゥヴィドゥヴィドゥビ・・・」のスキャット*2
その後に絶妙なタイミングで入る三連の演奏。

そんなふうに、ただカッコいいサウンドだけであれば、
ここまでヒットはしなかっただろうが、
そこに
「アッ・・・ ンッ・・・」
吐息、というより、まんまの喘ぎ声を加えたところ、
絶妙な背徳感を抱え、見事に大ヒットした。


伊勢佐木町ブルース (MEG-CD)
シングルジャケット/amazonより
 
  • 作詞 川内康範、作曲 鈴木庸一、編曲 竹村次郎
  • 1968年(昭和43年)1月5日、ビクターレコードより発売
  • オリコンチャート 最高位5位(年間11位/1968年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:伊勢佐木町ブルース 青江三奈 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:伊勢佐木町ブルース - Wikipedia

  • 今の世にこういうものをメジャーシーンに持ち出したら、見事に炎上しそうなもんだが
    当時でもやっぱり非難ゴーゴーだったと思われる。
    けど、世に出した。その決断がすごいね。

    とはいうものの、歌詞に直接的な性的表現はまったく出てこない。
    「夜」や「恋」、「夢」といったキーワードを見せるだけで、
    肝心なところは「♪ドゥドゥビ・・・」と伏せてしまう。

    こういうのをもっと露骨にやったのが、のちの
    『美・サイレント』(山口百恵/1979年/ by)で、
    肝心なところでマイクを外し、口パクする演出がニクい。

    オブラートに包む、という慣用表現*3があるが、
    これらでやっていることは、まさにその逆。
    肝心なところを隠すんだけど、却ってそれが余計に際立ってしまう。
    言うなれば、言葉によるチラリズムだ。


    スケベを餌に、渋くてカッコいい音楽をヒットさせるなんて、、
    なんていやらしいのだろう!


    名曲・聴きドコロ★マニアックス

    この曲一番の大問題、その喘ぎ声。
    一つ一つ、喘ぎ方というか、発声を変えている。
    おそらく意識してやっているのだと思う.

    わざとらしい喘ぎ声が
    女の小ずるさを演出している・・・ように聞こえるのは
    考えすぎか。

    妄想はそこそこに!



    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    伊勢佐木町
    横浜の中心にほど近い伊勢佐木。関内駅から横浜スタジアムや中華街へ向かうのとは反対側にある。群馬の伊勢崎ではない。
    曲のイメージから勘違いされがちだが、昔も今も色町だったことはなく、百貨店などが立ち並ぶ繁華街。日本最初の歩行者天国はこの街だという。


    灯がともる
    繁華街の明かりとも取れるが、上記のように、伊勢佐木は色町ではないので、おそらくは恋心に火が付いたことを表現しているのだと思われる。恋多き女の歌、なのだろう。


    雨がそぼ降り
    これは雨の降り方の表現というよりは、
    雨に降られて、傘や雨合羽もたいして役に立たず、服の中までぐっしょり濡れてしまった、
    そんな状態を想像する方がニュアンスとしては近いと思う。

    「そぼる」とは濡れてビショビショになること。
    濡れそぼる、という文学的な言葉にも使われる。
    しょんぼりとするとか、眼がショボショボする、という表現も
    ここから来ているものと思われる。


    現在入手可能な音源


    ライブはもう見ることができないので、映像をどうぞ


    www.youtube.com


    脚注

    *1:【ストリングスのリフ】ストリングスは、バイオリンを中心とした、弦楽器の多重奏のこと、リフは決まった旋律を、コード(和音)に合わせた音程を変えて繰り返すこと

    *2:スキャット】意味を持たない歌詞。「♪ラララ・・・」「♪ルルル・・・」や、ハミングみたいのもスキャットのひとつ。

    *3:【オブラートに包む】デンプンでできた薄い透明なフィルムをオブラートという。苦い薬や、飛び散りやすい粉薬を飲みやすいように包んで飲むのに使われる。
    比較的身近なところでは、「南国特産ボンタンアメ」などについている、口の中で溶ける包み紙のようなもの、
    あれがオブラートだ。
    「オブラートに包む」とは、直接的にものを言うのではなく、間に何かを挟むように、遠回しに言うことの例え。