表題の2曲。すっかりシングルのA面・B面曲*1だと信じ切っていた。
初めからひと組の楽曲として作られたのじゃないかと思ってしまうくらい、
見事な対比をみせているこの2曲。
続きものではなくまったく別々に作られたものと知ったのは、
ずいぶん後になってからのこと。
何も具体的な描写はないが、どこかヨーロッパの古都を思わせる雰囲気の中、
踊り娘のマリーと、素性不明の男ジョニィの
それぞれの視点から終わった恋を歌う切ない物語だ。
ヨーロッパの、といったものの、主人公たちの名前以外に
それを思わせるものはほとんどない。
むしろ名前の響きとしてはアメリカ的かもしれない。
しかし、クラシックギターの音色に誘われるがままに
聴き手の心は、いずことも知れぬヨーロッパの地へといざなわれる。
ボーカルの高橋真梨子(当時の芸名は高橋まり)の芯の強い歌声が
両者の切ない想いをひしひしと歌い綴る。
・・・といってもこの二人を“ジョニィ”と“マリー”の二人だと
結びつけるものは、実は、何もない。
『ジョニィへの伝言』で、伝言を残していく名もなき女は、
“ジョニィ”という恋人を酒場で2時間待ち続けていたが、
遂にはバーテン*3に伝言を残して街を出る。
後の高橋真梨子のソロ曲『あなたの空を翔びたい』(1978年/ by)にあるような
「♪まさか追いかけて来ないなんて思わずにいたから・・」のような状況だったのだろうか。
「♪西でも東でも」という歌詞からして、あてのある旅ではないのは確かだろう。
一方、『五番街のマリーへ』の主人公である、これも名もなき男は、
かつて暮らした五番街に向かうという人に、昔の恋人、“マリー”の消息を尋ねる。
「♪もしも嫁に行って 今がとても幸せなら 寄らずにほしい」
未練たっぷりに。
それなら、なぜあの時追いかけなかったのだろう。
それにしたって、双方とも
人を介してしかコミュニケーションが取れないのだろうか。
すれ違いの伝言ゲームが実にもどかしい。
片や女、片や男、それぞれ視点から、
人を介して相手にコンタクトを取ろうとしているのは共通。
別々の曲でありながら、
「女」はマリーで、「男」はジョニィであると、
この二人の物語であるということを、疑わない理由はない。
この筋書きを仕立て上げた確信犯は、
後に日本の歌謡史に一時代を築く、阿久悠その人。
ピンクレディーを擁して、同じ都倉俊一とのコンビで
さらなる非日常の世界を構築していくのは、もう少し先の話。
名曲・聴きドコロ★マニアックス
「♪今度のバスで行く西でも東でも」から「♪寂しげな街ねこの町は」までの
高橋真理子のボーカルは圧巻。
寂しいはずの場面に、この力強いボーカルをもってこられては
まいったとしか言いようがない。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
ペドロ&カプリシャス
バンド名にある、カプリシャスは英語でcapricious。「気まぐれ」「移り気」の意。
「ペドロ」はリーダーのペドロ梅村のこと。
ペドロと気ままな仲間たち、くらいの意味か。
ボーカルが一番目立つので、ボーカルの名前と思いがちだが
ペドロ梅村はボーカルでもなければ、バンドの主軸楽器を受け持っているわけでもない。
ちなみに、高橋まりは、バンド2代目のボーカル。
初代の前野曜子の時代には『別れの朝』(1971年/ by)をヒットさせている。
根っから陽気にできてるの
気が付けばさみしげな街ね
どちらも強がりから来ている言葉と思われる。
自分は楽天的だから心配いらない、と自らを励まし、
思えば大した街じゃなかった、とこの街への未練を断ち切ろうとしている。
自分でも強がりを言っていることに気付いているのか、
「そこのところうまく伝えて」としている
今度のバス
何故「バス」か不明。「汽車」のほうが遠くへ行けそうで良いような気もするが。
母音が「あ」で始まる言葉の方が響きが良いという選択が大きいのかもしれない。
ヨーロッパのバス事情、誰かわかりますか。
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