小気味よい軽やかなリズムに乗せて
異様なほど伸びやかなボーカルが紡がれる。
そして歌詞を見て驚く。
これだけ?*1
そう。たったこれだけの文章。
言葉を発するたびにやたら空白があるわけでもない。
曲のテンポがスローなわけでもない。
曲の半分をも占めるような長い間奏*2があるわけでもない。
カッティングのアコースティックギターと、
こぼれるようなカントリー風のギターの絡みによる
イントロなんかは、ごくごくあっさりとしたもの。
ただただ、単語の終わりの音が、
異様~~~~~~~~~な程に~~~~~~~~~~~、
長~~~~~~~~い~のよ~~~~~~~~~~~。
これだけの歌詞で3分近く持たせてしまう。
だけど、全然スローに聞こえない。
ちょっと不思議。
ところで気になるのが、この物語の主観は誰なのか、
ということ。
花嫁本人と考えるのが普通かもしれないが、
なんとなく違和感がある。
「嫁いでゆくの」「心に誓うの」
語尾が「の」と、女言葉になっているために
花嫁本人の言葉のような気がしてしまうが、
試しにこの「の」を、「よ」に変えてみよう。
花嫁は夜汽車に乗って嫁いでゆくよ
あの人の写真を胸に海辺の街へ
嫁いでゆく花嫁の情景を歌った
ナレーションによる叙事詩になる。
もしも、花嫁本人が自分のことを「花嫁」といったり、
相手のことを「あの人」といったりしているのであれば、
なんだか芝居じみてやしないか?
花嫁本人の心情を歌うのであれば、
自分は「私」であり、相手は「あなた」であるのが普通ではないだろうか。
何もかも捨てて衝動的に夜汽車に飛び乗った、
そんな自分の置かれているシチュエーションに
酔っているのだろうか。
親兄弟どころか、当の相手の同意を得たわけでもなく
ひとりその気になって突っ走ってしまった、
そんな押しかけ女房なのではないかと勘ぐってしまう。
果たしてこの花嫁の運命いやいかに?
名曲・聴きドコロ★マニアックス
藤沢エミが、伸びやかな中低音を駆使して
唄い出しからのメインボーカルを務め、
はしだのりひこが、高音のファルセットを生かして
サビというかブリッジというかの部分のボーカルを務める。
んん、なんだか逆じゃない?
逆じゃないところが普通じゃない。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
「夜汽車」
夜汽車どころか、夜行列車という言葉さえ死語になりつつあるご時世だが、
一般に、日をまたいで運行する長距離列車を指す。
言葉の持つイメージから、狭義では、
寝台車だけの列車とは分けて考えられることも多い。
話が脱線するが、かつては長距離を
安価で移動しようとする常套手段だった。
なにしろ、元々かかる切符代だけで、宿代がいらない。
時間の有効利用にもなる。
だけど、結構つらい。
晩年のものと違って、普通のボックスシートの列車だったからだ。
もちろんリクライニングもしないし、椅子も固い。
かつて何回か夜行の急行列車に乗ったことがあるが*3、
シーズン外であれば混んでないから、
時には対面含めたボックスを独占できることもあった*4。
しかし、足を向かいの席に伸ばしたところで、
座席の間を埋めるものはなく、空中で足を保持することができない。
とてもじゃないが、若い女性の一人旅に勧められる代物ではなかったと思う。*5。
しかもこの時代は文字通りの汽車、蒸気機関車だった可能性もある。
そこまでしての花嫁の旅立ちは、計画性のあるものではなく
突発的なものだったと思われる。
計画的だったとしたら周りは止めたに違いない。
少なくとも新郎は迎えに来ていたはずだ。
許されぬ恋だったのだろうか。
「花嫁衣装は 野菊の花束」
当然のことながら、着物の柄が野菊の花束、というわけではない。
嫁入りに、文字通り花を添えているものが、野菊の花束くらい、
という質素な状況を指している。
花束といっても、野菊である以上、ひとへの手土産ではない*6。
自分の好きな花なのか、相手の好きな花なのか。
このあたりにも、計画性のない衝動的な感じが現れている。
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