日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『花嫁』 はしだのりひことクライマックス ~ 来ちゃった(てへぺろ)。もしやそんな嫁入りか!

小気味よい軽やかなリズムに乗せて

異様なほど伸びやかなボーカルが紡がれる。

 

そして歌詞を見て驚く。

これだけ?*1

そう。たったこれだけの文章。

 

 

シングルジャケット/駿河屋より
 
  • 作詞 北山修、作曲 端田宣彦・坂庭省悟、編曲 青木望
  • 1971年(昭和46年)1月10日、東芝音楽工業より発売
  • オリコン最高位2週連続1位(年間7位/1971年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:花嫁 はしだのりひことクライマックス 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:花嫁 (はしだのりひことクライマックスの曲) - Wikipedia
  •  

    言葉を発するたびにやたら空白があるわけでもない。

    曲のテンポがスローなわけでもない。

    曲の半分をも占めるような長い間奏*2があるわけでもない。

      

    カッティングのアコースティックギターと、

    こぼれるようなカントリー風のギターの絡みによる

    イントロなんかは、ごくごくあっさりとしたもの。

     

    ただただ、単語の終わりの音が、

    異様~~~~~~~~~な程に~~~~~~~~~~~、

    長~~~~~~~~い~のよ~~~~~~~~~~~。

     

    これだけの歌詞で3分近く持たせてしまう。

    だけど、全然スローに聞こえない。

    ちょっと不思議。

     

     

    ところで気になるのが、この物語の主観は誰なのか、

    ということ。

    花嫁本人と考えるのが普通かもしれないが、

    なんとなく違和感がある。

     

    「嫁いでゆくの」「心に誓うの」

    語尾が「の」と、女言葉になっているために

    花嫁本人の言葉のような気がしてしまうが、

    試しにこの「の」を、「よ」に変えてみよう。

     

    花嫁は夜汽車に乗って嫁いでゆくよ

    あの人の写真を胸に海辺の街へ

     

    嫁いでゆく花嫁の情景を歌った

    ナレーションによる叙事詩になる。

     

     

    もしも、花嫁本人が自分のことを「花嫁」といったり、

    相手のことを「あの人」といったりしているのであれば、

    なんだか芝居じみてやしないか?

     

    花嫁本人の心情を歌うのであれば、

    自分は「私」であり、相手は「あなた」であるのが普通ではないだろうか。

    瀬戸の花嫁』(小柳ルミ子/1972年/試聴/停止 byiTunesからダウンロード)のように。

     

     

    何もかも捨てて衝動的に夜汽車に飛び乗った、

    そんな自分の置かれているシチュエーションに

    酔っているのだろうか。

     

    親兄弟どころか、当の相手の同意を得たわけでもなく

    ひとりその気になって突っ走ってしまった、

    そんな押しかけ女房なのではないかと勘ぐってしまう。

     

    果たしてこの花嫁の運命いやいかに?

     

     

     

    名曲・聴きドコロ★マニアックス

    藤沢エミが、伸びやかな中低音を駆使して

    唄い出しからのメインボーカルを務め、

     

    はしだのりひこが、高音のファルセットを生かして

    サビというかブリッジというかの部分のボーカルを務める。

     

    んん、なんだか逆じゃない? 

    逆じゃないところが普通じゃない。

     

     

    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    「夜汽車」

    夜汽車どころか、夜行列車という言葉さえ死語になりつつあるご時世だが、

    一般に、日をまたいで運行する長距離列車を指す。

    言葉の持つイメージから、狭義では、

    寝台車だけの列車とは分けて考えられることも多い。

     

    話が脱線するが、かつては長距離を

    安価で移動しようとする常套手段だった。

    なにしろ、元々かかる切符代だけで、宿代がいらない。

    時間の有効利用にもなる。

     

    だけど、結構つらい。

    晩年のものと違って、普通のボックスシートの列車だったからだ。

    もちろんリクライニングもしないし、椅子も固い。

     

    かつて何回か夜行の急行列車に乗ったことがあるが*3

    シーズン外であれば混んでないから、

    時には対面含めたボックスを独占できることもあった*4

    しかし、足を向かいの席に伸ばしたところで、

    座席の間を埋めるものはなく、空中で足を保持することができない。

    とてもじゃないが、若い女性の一人旅に勧められる代物ではなかったと思う。*5。 

    しかもこの時代は文字通りの汽車、蒸気機関車だった可能性もある。

     

    そこまでしての花嫁の旅立ちは、計画性のあるものではなく

    突発的なものだったと思われる。

    計画的だったとしたら周りは止めたに違いない。

    少なくとも新郎は迎えに来ていたはずだ。 

    許されぬ恋だったのだろうか。

     

     

    「花嫁衣装は 野菊の花束」

    当然のことながら、着物の柄が野菊の花束、というわけではない。

    嫁入りに、文字通り花を添えているものが、野菊の花束くらい、

    という質素な状況を指している。

    花束といっても、野菊である以上、ひとへの手土産ではない*6

    自分の好きな花なのか、相手の好きな花なのか。

    このあたりにも、計画性のない衝動的な感じが現れている。

     

     

    現在入手可能な収録CD/視聴可能

     

    脚注

    *1:全文引用するわけにいかないので、リンク先のうたまっぷを見てほしい

    *2:ロックバンドなんかでときどき聴くことができる、ギタリストの自己満足

    *3:「ちくま」「はまなす」「利尻」など

    *4:そんな状態だから廃止になるんだよな

    *5:利用する人いたけどね

    *6:子どもじゃあるまいしね