日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

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『木綿のハンカチーフ』 太田裕美 ~ 天然悪女の男いじめうた

すべて女が悪いと思う。 新社会人として、意気揚々と都会へ旅立っていった男と、 故郷にひとり残された恋人の、文通形式*1のこの表題曲を聴くたびにそう思う。 しかし一般世間の反応を見ると、どうもその解釈は違うらしい。 都会にもまれて、変わっていく男、 やがて男は故郷を捨て、恋人にも別れを告げる曲だと。 女は、最後にひとつ小さな願い事を告げて、別れを受け容れる。 「♪涙ふく 木綿の ハンカチーフください」 いじらしいじゃないの。 シングルジャケット/amazonより 木綿のハンカチ…

『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』 / ダウン・タウン・ブギウギ・バンド ~ 果たして、歌である

これは果たして、歌なのだろうか。 草創期に散々物議をかもした「ラップ」のほうが、はるかに歌らしいではないか。 ラップミュージックには、メロディーラインはなくても、 リズムに乗った言葉がある時点で、はるかに歌であるといえる。 一方、表題曲ときたら、タイトルコールである 「♪港のヨーコヨコハマヨコスカ~」のコーラス部分以外には、 歌唱にメロディーラインも、リズムもない。 ただただセリフがあるだけだ。 ベースのリフ*1に乗って、 強面のニイちゃん、ネエちゃんの「証言」が延々と綴られ…

『東京』 マイ・ペース ~ 東京東京うるさいんだよう

『東京』の名をタイトルに冠した歌は数多くあれど、 個人的にもっとも好きな曲がこれ。 連呼すればいい*1ってもんでもないが 「東京」という言葉の繰り返し頻度でも、とびぬけて群を抜いている。 おそらく遠距離恋愛という言葉も定着していなかった時代だろう。 遠く離れた東京で暮らす恋人に思いめぐらすこの曲は、 印象的なフルートの音色で始まる。 淡々としたメロディーの中、東京、東京、とひつこく繰り返しているうちに 感極まったように切なく力強いサビに突入し、 最後はどのパートがメロディーラ…

『タイムマシンにおねがい』 / サディスティック・ミカ・バンド ~ 時代に早すぎたギターサウンド

初めてパフィーを聴いた時の、激しいまでの既視感は、 これだったのかもしれない。 当時は、shampoo*1などとの類似性が言われ、 どこか腑に落ちないままに、ああ確かに、と半ば納得していたが、 まさかそこから20年以上もさかのぼったところ*2に 既視感*3の源が転がっているとは思わなかった。 それにしてもこの表題曲、今日、今の時代にリリースしても なんら違和感のない曲だと思う。 ましてや、パフィーの曲と嘘紹介をしても信じる人がいるんじゃないかな? 現代においてもちょくちょくテ…

『たそがれの銀座』 黒沢明とロス・プリモス ~ 数え歌になり損ねたかムード歌謡

やがて日本のポピュラー・ソングの王道がロック・ポップス*1に移り代わり、 その傍流としてフォーク*2やニュー・ミュージック*3が台頭してきた頃。 従来の古いタイプのうたは「歌謡曲」という新たなジャンル名を頂戴して、 独自の進化を遂げていった。 その中に、「ムード歌謡」という名を与えられた枝葉的なジャンルが発生した。 大雑把に定義するならば、ラテンのリズム*4に乗せて、 コーラスグループが歌う歌謡曲を指すものということになる。 ムード歌謡は、歌詞の内容でさらに2系統に分けられ、…

『ジョニィへの伝言』『五番街のマリーへ』 / ペドロ&カプリシャス ~ コミュ障なふたりの伝言ゲーム物語

表題の2曲。すっかりシングルのA面・B面曲*1だと信じ切っていた。 初めからひと組の楽曲として作られたのじゃないかと思ってしまうくらい、 見事な対比をみせているこの2曲。 続きものではなくまったく別々に作られたものと知ったのは、 ずいぶん後になってからのこと。 何も具体的な描写はないが、どこかヨーロッパの古都を思わせる雰囲気の中、 踊り娘のマリーと、素性不明の男ジョニィの それぞれの視点から終わった恋を歌う切ない物語だ。 ヨーロッパの、といったものの、主人公たちの名前以外に …

『ちいさい秋みつけた』 ボニー・ジャックス ~ 胸に沁みる秋のうたは、病床のうたか

それにしても、なんて美しい曲だろう。 印象的な前奏から、一抹の寂しさを伴って胸にしみてくる。 『想い出の渚』(ザ・ワイルド・ワンズ/1966年/※試聴環境がないようです by)の稿でふれたように、 夏のうたがノスタルジィ*1であるのならば、 秋のうたはというと、ロンリネス*2だろうか。 同じ回想でも、秋の歌は懐かしさよりも寂しさが先立つような気がする。 主人公は、目かくし鬼さんの遊びに参加しているのではなく 窓越しに聞こえてくる音を頼りに、秋の情景を見ているようだ。 病床にで…

『伊勢佐木町ブルース』 青江三奈 ~ スケベを餌にやりたい音をやってのけるべし

歌詞の内容はともかくとして、イチイチかっこいい曲である。 跳ねるようなストリングスのリフ*1、 静寂の中、時計の秒針が時を刻むような、乾いたドラムの音、 青江三奈のタメのきいたハスキーボイス、 そしてブレイク、 「ドゥドゥヴィドゥヴィドゥビ・・・」のスキャット*2、 その後に絶妙なタイミングで入る三連の演奏。 そんなふうに、ただカッコいいサウンドだけであれば、 ここまでヒットはしなかっただろうが、 そこに 「アッ・・・ ンッ・・・」 吐息、というより、まんまの喘ぎ声を加えたと…

『想い出の渚』 ザ・ワイルドワンズ ~ 日本人の夏はノスタルジィでできている

…y Little Lover/1995年/※試聴環境がないようです by)、 「♪君がいた夏は遠い夢の中 空に消えてった打ち上げ花火」 『夏祭り』(whiteberry/2000年/※試聴環境がないようです by)など、 挙げだすと、これだけで記事が書けるほどきりがない。 そのうち番外ででも書こうかな。 ジャケット/amazonより 想い出の渚The Wild Onesロック¥255provided courtesy of iTunes 作詞 鳥塚茂樹、作曲 加瀬邦彦、編曲 …

『恋のフーガ』 ザ・ピーナッツ ~ 突き刺さるイントロに、ふとゴジラの面影をみる

突然の大音量にびっくりする。 今の言葉で言うと、「オーケストラヒット」*1に相当する音だろうが そんな言葉もない当時にしてみれば、相当センセーショナルな音だったに違いない。 その鋭角的な2音からなる衝撃音と、 入れ替わり現れるティンパニーソロとの 繰り返しによるイントロが特徴的というよりは、異様とも言えて印象的。 このアレンジは、ピーナッツといえばこの人、宮川泰によるもので、 コンサートやレコードの冒頭で度肝を抜くにはまさにもってこいだ。 現代においてもその存在感に圧倒される…

『恋のバカンス』 ザ・ピーナッツ ~ ジャパン・ポップス、バラ色の幕開け

洋楽ポップスのカバーを中心に活躍してきた 双子のデュオ*1、ザ・ピーナッツ。 やがてぽつぽつと出し始めたオリジナルソングが、この曲で大ヒットに至った。 洋楽メインでやってきたグループが、オリジナルソングでヒットを飛ばすのは 後のブリリアント・グリーンみたいな感じだと思うが、 ちょっとイメージちがうかな? どちらが主旋律ともとらえきれないツインボーカルは、 声質こそ旧態依然とした「歌謡」の雰囲気を漂わせているものの、 曲全体をつつむ雰囲気が、新たな時代の音楽を予感させるものとな…

『いつでも夢を』 橋幸夫・吉永小百合 ~ 曲がいいと中国語でもイケるのよ

どこで覚えたのかはとんと記憶がないが、 昔からこのメロディーは知っていた。 表題曲をそれとして最初に認識したのは 1992年のサントリーの烏龍茶のコマーシャル*1が最初だったと思う。 中国語で唄われたこのCMは当時ちょっとした話題となり、 調子に乗って新聞に載せた烏龍茶の全面広告には、 譜面入りで中国語のフリガナ付の歌詞が載っていた。 「♪ピーシーユーハイシャシーユーニー」(適当) や、よく覚えていないや。広告取っておけばよかったかな。 それはさておき、古き良き時代のデュエッ…

『ハイそれまでョ』 植木等 ~ 卓越した表現力はタチが悪い

柳の下にドジョウはウジャウジャといたようで、 前年の『スーダラ節』が、ヒットの勢いを得て映画化*1し、 さらにつづけての映画『ニッポン無責任時代』の主題歌(のひとつ)となったのがこれ。 つづけて、といっても実際は間にもう2作映画があるらしいが、 実際のところどれも歌以外はよく知らない。 歌ありきの作品、というのがよくわかる。 一応そのタイトルを発表順に挙げておくと、 『スーダラ節 わかっちゃいるけどやめられねぇ』 (1962年3月公開。主題歌『スーダラ節』※試聴環境がないよう…

『スーダラ節』 ハナ肇とクレージー・キャッツ ~ 生真面目にとほうもない脱力劇

サラリーマン哀歌の元祖ともいえる楽曲だが、 その突き抜けるまでの能天気なアレンジと歌唱が、 根底に流れる暗さを微塵も感じさせない、 浮かれた、酔いの境地に似た空間を醸し出している。 サビは、脱力を無限に発する 「♪スーイ スーイ スーダラダッダ スラスラ スイスイスイ」 ときたモンで、 どこかを泳いでいるのか、何かをそらんじているのか、 まあ意味も何もないのだろうが、とにかく強烈だ。 すっとぼけた管楽器の伴奏が、きらびやかに花を添えている。 そして何の必然性もなく、歌の直前の…

『東京ナイトクラブ』 松尾和子・フランク永井 ~ オ・ト・ナな男女の火アソビ劇場

フランク永井による、ダンディーな低音の響きと 松尾和子の、色っぽく艶やかでかすれ気味の声による 掛け合いデュエット。 じれったいまでに、タメのきいた伴奏と これまた演奏以上にじれったい、二人のオトナな会話。 それをひと言でいうなら、ムーディ。 ナイトクラブ、とはいうものの、おそらくダンスホールのような場所なのだろう。 そこを舞台とした、大人の恋の駆け引きを歌った曲だが、 それにしても、まあ、軽薄なことよ。 以下2番の歌詞 (女)もう私、欲しくはないのね (男)とても可愛い、逢…

『お富さん』 春日八郎 ~ 意外や意外にヤクザな物語だよお富さん

「♪死んだハズだよ お富さん」 元ネタは歌舞伎*1らしい、と知ったのは最近のこと。 人の女に手を出したチンピラが、女ともども半殺しの目にあって、 命からがら逃げだして自分だけ生き延びたと思っていた。 しばらくのち、 当の女は誰かに囲われていて、いい暮らしをしていたことを知り、 てめえだけがいい目見やがって、と男は女をユスりにかかる。 そんな話らしい。 歌の歌詞も、よく見ると確かにそうなっている。 ・・・マジ? 後年の復刻版ジャケット/amazonより お富さん春日八郎歌謡曲¥…

『お祭りマンボ』 美空ひばり ~ 出来すぎちゃったネタフリ

『♪ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ そ~れ、それそれ お祭りだァ!』 このフレーズときたら、いつの時代になっても おもわず使ってみたくなるモノらしく、 90年代の『お祭り忍者』(忍者/1990年/試聴はこの先から)や 21世紀に入っての『ダンシング!夏祭り』(10人祭/2001年/※試聴環境がないようです by )にも 手を変え品を変え、組み込まれていたりする。 ノリノリだもんねぇ。フレーズがおもわず口について出てしまうほどに。 しかしその内容はというと、祭り…

『東京キッド』 美空ひばり ~ その音質は時代の音なのか

「♪右のポッケにゃ夢がある、左のポッケにゃチューインガム」 美空ひばり主演の同名映画を見たことはなくとも、 ズボンのポケットに手を突っ込んで歌う、子役時代のひばりの映像とひっくるめて 表題曲を記憶している人が、多いのではないだろうか。 まさに自分がそうだ。 また、シルクハットに燕尾服という姿で歌う 『悲しき口笛』(1949年/※試聴環境がないようです by )と しばしば混同してごっちゃになるのも、よくある話。 まさに自分がそうだ!(ダメダメだ!) それはさておき、この当時の…

『長崎の鐘』 藤山一郎 ~ わずかに差す光明を、瞬時に覆い尽くす闇

あえていうまでもなく、長崎での戦災をテーマにした曲。 直接的に原爆を指す表現は一切出てこないものの、悲痛な歌詞とメロディーに、誰もがそれを連想せざるをえない。 曲調も、歌詞も、歌声も、何もかもが、重苦しい雰囲気を醸し出している。 とても、とても美しいメロディーラインの曲なのだが、、、とにかく重い。 高校の修学旅行で、長崎の原爆資料館に連れていかれた時のこと。 その直前に連れていかれた文明堂*1の工場見学にて、土産コーナーの試食カステラを、カラスやハイエナが群がるように出て来る…

『誰か故郷を想はざる』 霧島昇 ~ まるで縦横無尽の格ゲーコマンド

表題曲をはじめて知ったのは、どういうわけか夢路いとし・喜味こいし*1の漫才だった。 小学生のころだったと記憶しているが、TVやラジオの演芸番組*2、今でいうお笑い番組を片っ端からカセットテープに録音し、ダブルカセットのラジカセ*3を駆使してCMや前振りなどの余計な部分をカットして寄せ集めた”漫才集”を何本も作成して、ラジカセやヘッドホンステレオ*4で楽しんでいた。 いまでもこのころの漫才ネタをソラでいえるほど当時聴きこんでいたのだが、つい先日おぼん・こぼんの漫才を久しぶりにテ…

日本百名曲 -20世紀篇- ~ はじめに。

競って比べたことはないが、他人よりは数多く幅広く聴いていると思う。 古今東西の歌唱、楽曲を、ジャンル問わず、節操なく 広く浅く聴きあさってきた。 決して意識していたわけではないが、 最新のヒット曲にはあまり目を向けず、 後世まで残ったものを聴きかじるという、 非常においしいとこ取り*1のやりかたでだ。 そのためだろうか、曲にまつわる背景・時代や、 歌手自身のプロフィールはほとんど知らずに、 つまりは“思い出フィルター5割増し”、のようなひいき目を持たず、 楽曲そのものの持つ魅…