日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『歩いて帰ろう』 斉藤和義 ~ レールからの脱却。そのささやかな第一歩

あらためて歌詞を見てみると、意外なほど愚痴っぽいのに、 なんだかとってもハッピーなうた。 みんなでワイワイと適当な楽器を持ち寄って、 せーのでこの曲を演奏してみるだけで、 たぶんきっと下手なりにもみんなハッピーになれる。 タンバリンをシャリシャ…

『夏の日の1993』 class ~ 時代の粋を集めたバカップルの一発屋ソング

よくぞ名付けたり、『夏の日の1993』 これで1993年の夏のヒット曲でなければ もはや嘘を通り越してペテンである。 ピンク・レディー『カルメン'77』(1977年/※試聴環境がないようです by)、 中森明菜『十戒(1984)』(1984年/※試聴環境がないようです by)、…

『島唄』 ザ・ブーム ~ さとうきび畑、現代沖縄語訳

沖縄音楽の最大のヒットが、 このヤマトンチュ*1による『島唄』だったのは、 ちょっとした皮肉だったろうか。 しかし、 『ハイサイおじさん』*2(1976年/※試聴環境がないようです by)や 『すべての人の心に花を』(1980年/※試聴環境がないようです by)で…

『君がいるだけで』 米米クラブ ~ 移り気男の本命アピールタイム。そう、例えば、、、

おそらくは、本人たちですら意図せぬままに、 頂点まで登り詰めてしまった、偉大なるマイナー、米米クラブ*1。 推測でしかないが、この歌にしても、もしかすると 元々はトレンディー路線のポップスに対する、単なるパロディだったのかもしれない。 例えば、…

『悲しみは雪のように』 浜田省吾 ~ どんなに積もっても、いつかは融けるんだ

心の叫びを絞り出すような、心に響くメロディーに おもわず勘違いしそうになる。 「♪心の底から誰かを愛することができるはず」 「♪誰もが Wow.. 愛する人の前を気づかずに通り過ぎてく」 自分の思いに気付いてくれない人に対して、遠回しに想いを伝えている…

『さよなら夏の日』 山下達郎 ~ 勝手な解釈は聴き手の自由だ(くれぐれも自己責任で)

毎回毎回、もっともらしく歌詞の解説をしてはいるが、 実のところは、シチュエーションの設定次第で、 物語の解釈はどうとでもなることが多い。 こういうのを曲の懐の広さ、という。 曲に懐の広さがあるからこそ、 人はその中に自分の実体験や、見聞きした物…

『花咲く旅路』 原由子 ~ 花びらの紫色は人生の色

ときはまだまだ、バブル景気を強く引きずっているころ。 日本中すべてが浮かれまくって 「♪24時間戦えますか?」なんて歌が流行った時代だが、 (『勇気のしるし』(牛若丸三郎太*1/1989年/※試聴環境がないようです by)) どういうわけかこの時代は、ノス…

『少年時代』 井上陽水 ~ 憧れを覚えていますか。いいえ忘れたことにしました。

和製ボブ・ディラン、といえば吉田拓郎のことだが、 いやいや和製ディランであれば、むしろ 井上陽水のことだろう、と常々思っている。 どうやら自分の持つボブ・ディランのイメージと 世間の持つボブ・ディランのイメージに隔たりがあるらしい。 自分のイメ…

『真夏の果実』 サザンオールスターズ ~ 夢の中だけに残る、ゆきずりの恋物語

まず第一に、小林武史によるアレンジが秀逸。 トーンチャイム*1とハープの中間のような音の 静かなイントロから導かれる 桑田佳祐のつぶやくような歌い出しに、 切なさがあふれている。 ゴテゴテした装飾の一切ない、 シンプルアレンジの一本鎗で、 桑田のボ…

『未来予想図II』 ドリームズ・カム・トゥルー ~ シンプルで強い夢は、きっとかなう。

あらかじめ回数を決めた、ポンピングブレーキ*1はやめましょう。 とっても危ないことこの上ない。 「♪ブレーキランプ5回点滅 ア・イ・シ・テ・ルのサイン」 かくいう自分も、若かりし頃に(恥ずかしながら)何回か実行したことがある。が、 去り際にやっても…

『M』 プリンセス・プリンセス ~ 想いがブラックホール化している。立ち位置の問題か?

あらためて歌詞をみて初めて気づいたのだが、 別れた相手を想い出にできなくて苦しい、 という単純な歌とは、どうやら違うらしい。 彼に言われた別れの言葉が、 いつまでも頭の中でリフレインしていて、逃れられない。 だけどなぜか、愛しさを忘れることがで…

『Train-Train』 ザ・ブルーハーツ ~ さまよえる羊たち応援団

ブルーハーツの最大の良さは ひとえにその、わかりやすさ、にあると思う。 「♪見えない自由が欲しくて」 「♪見えない銃を撃ちまくる」 「♪どんな記念日なんかより」 「♪どんな記念碑なんかより」 ダジャレ一歩手前の*1、韻を踏んだ歌詞と、 どんなことがあっ…

『大きな玉ねぎの下で』 爆風スランプ ~ 純粋な少年が大人になる、通りゃんせ通りゃんせ

爆風スランプのボーカル、サンプラザ中野と云う御仁は つくづく不思議な歌い手で、 そもそも上手いのか下手なのかがよくわからない。 ・・・イヤ、もちろん上手ですよ? だけどなんて言うか、情緒の襞ひだというか、 そういうのをあまり感じさせない歌い方を…

『北ウイング』 中森明菜 ~ 鳴り響く不協和音は、破局の予感か

サビでは、力強く。 そしてそれ以外の部分では、囁くように。 遠い町に行ってしまう恋人に、 一緒に来て欲しいと言われたものの、一度は断ったのだろう。 しかし後悔と未練は募るばかりで断ち切れない。 すべてを捨てて、かつての恋人のもとへと旅立つ。 中…

『探偵物語』 薬師丸ひろ子 ~ 連想ゲームの時間です。お題は「とまどい」

その詩といい、そのメロディといい、 かなり映像的な曲だと思う。 「♪あんなに激しい潮騒が あなたの後ろで黙り込む」 激しく波音を立てていた海が、 ひとりの人物を映しだした瞬間に、無音の世界に変わる。 「♪夢で叫んだように唇は動くけれど 言葉は風にな…

『越冬つばめ』 森昌子 ~ 美しく唄うツバメ男は何にあらがうのか

おそらく一生のうちに一度も訊かれることは無いだろうが、 もしも、「演歌で最も美しい曲は」と問われたとしたら 迷わずにこの曲を選ぶ。 「♪ヒュールリー ヒュールリーララー」 森昌子のよく通る声による、寂しげなメロディが 実にキャッチ―で印象的。 この…

『め組のひと』 ラッツ&スター ~ べらんめえ女とそれを取り巻くナンパ男たち

浮かれたバブル期の到来を予感させるような ラテン風でトロピカルな曲調*1とは裏腹に、 「いなせだね」 「目元流し目」 「粋なこと」 「め組のひと」 「気もそぞろ」 と、やけに古風な言い回しが目に付く。 視線の力と妖しい魅力で、男たちを虜にしていく女…

『冬のリヴィエラ』 森進一 ~ さわやかな森進一はお好きですか?

演歌とは何か、という問いの解のひとつに、 「演歌歌手が歌っているうた」という、 文字通り本末転倒しているくせに言い得て妙、な答えがある。 演歌というのは非常に厄介な分類で、 メロディーやリズムといった、音楽上の特徴から、 ジャンルを分けることが…

『聖母たちのララバイ』 岩崎宏美 ~ この子守歌はテンションが高すぎて眠れやしない

どこまでも、上がっていく音階の歌唱。 どこまでも、ヒートアップしていく演奏。 歌いだしからクライマックスまで、 この歌唱と演奏の二つが 螺旋のように絡み合い上り詰めていく。 まさに圧巻。 ん~、あふれる思いが強すぎるのか うまく文章で表すことがで…

『赤いスイートピー』 松田聖子 ~ 実は隠れ鉄道ソング

なんの気のてらいもない、純粋にメロディーのいい曲。 よって、よほど文章が巧みか、曲の構成に造詣が深くないと 文章を書く手掛かりが見つからない。 作曲者の呉田軽穂が実は松任谷由実の変名だった、 というような、ちょっと調べればわかる裏話を書いても…

『センチメンタル・ジャーニー』 松本伊代 ~ 短命を宿命づけられていた長寿曲

センチメンタル、という言葉の意味を 思わずはき違えてしまいそうになるこの曲、 歌詞の最中に自己紹介が入るという 画期的なチャレンジを施した曲でもある。 そしてチャレンジャーの最たる部分は 自らが、賞味期限を数か月に絞ってしまっているところだ。 …

『お嫁サンバ』 郷ひろみ ~ 追っかけに追い越されてるんですけど。

ある種、持ちネタのひとつとして、 ことあるごとに郷ひろみがエピソードを披露しているうた。 メロディーが先にできていて、 あとからそれに合わせて歌詞が加えられるという いわゆる“曲先”*1の曲にあって、 先に聴いていたメロディーのよさに仕上がりを楽し…

『ルビーの指環』 寺尾聰 ~ たぶん、1拍目はアンタッチャブルなのだろう

ひとつひとつの要素を見ていくと、 まったくと言っていいほど、いいところが見当たらない。 終始低い声でぼそぼそ歌うし、 単調で盛り上がりに欠けるし、 未練たらたらの失恋ソングだし、 歌い手のビジュアルもいまひとつパッとしないし。 だのに、なぜここ…

『防人の詩』 さだまさし ~ エキサイティング・クエスチョンズ

まぁ、まずは落ち着け。 何があったか知らんけど、とにかく落ち着け。 どう どう。 「♪海は死にますか?!」 「♪山は死にますか?!」 「♪風はどうですか?!」 「♪海もそうですか?!」 「♪教えてください・・・」 まくしたてるように、終始問いを投げかけ…

『舟唄』 八代亜紀 ~ ときどき無敵になればいい ♪チャンチャチャチャラー

こうやって、ただひとり 呑み屋でチビチビやっているだけで 歌になるのだから、演歌ってすごい。 「♪しみじみ飲めばしみじみと」 「♪ホロホロ飲めばホロホロと」 「♪ぽつぽつ飲めばぽつぽつと」 しかし、いずれも言葉としては意味不明だ。 「しみじみ・・・…

『異邦人』 久保田早紀 ~ タマゴが先か、ニワトリが先か。(いや、クボタサキだ)

ほんのつま先ほどの、 何とも表現できない違和感があった。 サブタイトルに「シルクロードのテーマ」と ついていたことを知ってからだと思う。 そのとおりイントロからの演奏は実に中東的だ。 終始演奏を引っ張っているストリングスもそれっぽいし、 ズンチ…

『ビューティフル・ネーム』 ゴダイゴ ~ beautifulは、うつくしいではなく、すばらしいなんだ。

これは小学校か何かで習ったような覚えがある。 音楽の教科書ではなく、小さな歌本のような 副読書に載っていた気がする。 その時には、こんな絶妙にノリの良い歌だとは、思いもよらななかった。 オリジナルの『ビューティフル・ネーム』は 「♪きょうも こど…

『大都会』 クリスタル・キング ~ 底辺の現実にも、希望あふれる壮大な歌

最初に現れたきり、その後なかなか登場しないサビを待ちわびているうちに、 いつしかBメロのハーモニーの魅力の虜になってしまった。 ロングのカーリーヘアー、田中昌之と、 パンチパーマ+サングラスのムッシュ吉崎の ツインボーカルをメインに据えたバンド…

『いい日旅立ち』 山口百恵 ~ 豪華でドラマチックな、後ろ向きのうた

どうも、無視して通ることができない曲 というものがあるようだ。 深田久弥は、著書「日本百名山」の甲斐駒ケ岳の項において、 たとえ「10名山」に絞ったとしても 決して落とすことのない山としてその名を挙げている。 同じように、この曲も決して外すことは…

『かもめが翔んだ日』 渡辺真知子 ~ よーいドンで始まる、全速力競争

聴いているこちらまで 指がつりそうになる。 ゆったりとしたイントロの 「♪か・も・め・が・と・ん・・・だー!!」 の号砲を合図に、すべての楽器が一気に疾走するのだ。 シングルジャケット/amazonより かもめが翔んだ日渡辺 真知子歌謡曲¥250provided cour…